『宝石の国』最終回 第108話 結末ネタバレ考察感想 フォスは報われたのか 人間のいない世界

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『宝石の国』最終回 第108話 結末考察感想 

遂に最終話となった宝石の国。フォスはやはり無事に取り出されていたようで安心しました。

兄機はママに会うことができるのか

画像引用:講談社 市川春子 宝石の国(12)

ママは人間のアユム博士。金剛先生に「渡ったら橋は燃やして」の言葉を残した人間です。人間という存在はフォスが抱えて燃え尽きたはず。全ては「無」に帰したのです。もう会えないということは兄機も心のどこかではわかっていてもそう願ってしまうのかもしれない。

人間を憎んで隕石を地上に衝突させた過去があります。しかし大好きなアユム博士もまた人間なんですよね。人間は煩悩の塊ですが、「善」の心を持ち合わせた人もいます。その人間も無に帰しました。

この結末はフォスが幸せになってくれたという点では救いがあります。ただ、個人的な意見ですが人間という存在そのものが否定されているようにも思えてしまい、なにか引っかかりました。第108話という「煩悩」の数で完結した宝石の国。特にフォスがラピスラズリの頭部を手に入れてからは、これでもかという程人間の「愚」の部分が描かれてきました。

フォスの変貌だけでなく、カンゴームが女化したり、エクメアとくっついたり、これもまた煩悩。仏教については詳しくありませんが、煩悩こそが人を苦しめるもの。ブッタは煩悩を捨て、悟りを開き、涅槃となったそうです。

永遠の再生から解き放たれた人間

輪廻転生は、あらゆる生き物は死んでも姿形を変えて生まれ変わるというもの。
宝石の国においては、元は人間だった宝石、月人、アドミラビリス族も輪廻転生していたといえるのかもしれません。

涅槃(「ニルヴァーナ」)とは、「吹き消す」という意味があるそうです。

ニルヴァーナ
英語:nirvana

「ニルヴァーナ」とは・「ニルヴァーナ」の意味
「ニルヴァーナ」とは、インドの言語のひとつ「サンスクリット語」における「涅槃」のことだ。

涅槃とはインドにおける仏教用語であり、その意味は「吹き消す」である。通常「吹き消す」を使う場合において、ろうそくや薪についている火を風を使って消すことを意味する。しかし仏教における火とは、生命体が等しく持っている「煩悩」のことだ。煩悩は生命体が生きていくうえで動かさなければならない五感から生まれる衝動のことであり、食べ物を欲する「食欲」や友人や異性を求める「色欲」などがあげられる。

煩悩は生命体の心を乱す存在として忌み嫌われる存在だが、この存在は生命と密接にかかわっている。そのため仏教における「吹き消す」とは、生命体の死によって初めて心を乱す存在の「煩悩」が消えるという意味で涅槃が使われるのだ。

引用:実用日本語表現辞典

フォスの涅槃入り説があるようです。まさに人間のカルマを背負って燃え尽きたフォスは、涅槃に入ったともいえるのかもしれません。そして人間は永遠と続く輪廻から解き放たれました。まさに「宝石の国」とは、フォスが煩悩を抱えてすべての怨嗟から解き放たれる第107話を描くために作られたと言っても過言ではないのではないでしょうか。

おそらく仏教をテーマにした作品を作るにあたって「涅槃入り」こそがクライマックスとなるのは想像に難くないです。それでもそのゴールに向かって12年間も本作を書き続け、完結させた市川先生はすごい。

そこで兄機の話に戻りますが、結論を言うと兄機は二度とママのアユム博士に会えないのではないでしょうか。アユム博士は輪廻を断ち切られ無に帰したため。そこに一抹の寂しさを感じました。

個人的に宝石の国で一番印象に残ったシーンは、フォスが金剛先生に「祈れ」と迫るシーンでした。

 ‎ 画像引用:講談社 市川春子 宝石の国(10)

あんなに好きだった金剛先生のことを憎むことになる、でもこれは現実世界ではよくあることです。仲が良かった友人や恋人、夫婦がいつの間にか憎しみ合う、まさに人間の業や脆さが表現された一コマだったと思います。

これは仏教に限らず、宗教感に関わる話ですが、信仰とは人々の心を救うものです。しかし誰もが悟りを開いたブッタにはなれません。これは私が無宗教だからですが、それでも煩悩や憎しみを抱えて藻掻き苦しみながらも、必死に生き続ける人間にも価値があると私は感じます。そして世の中の大半の人間が苦しみを抱えています。

そのため「人間」という存在が燃え尽きて、純粋な岩石生命体だけの世界はそれは幸せな世界だろうけど、人間という存在が断ち切られた最終話の世界がイマイチ腑に落ちず。

それでも宝石たちを救うために矢面に立ち続けたフォスが救われたのは良かったです。思い返せば、他者を助けようという明確な意志を見せたのはフォスと金剛先生だけだったような気がします。他にイマイチ思い出せません。最後に彗星となったフォスは、どういう意味があるのかわかりませんが、永遠に宇宙を見守っているとしたらフォスらしい最期だと思います。

個人的には初期のフォスがとても好きだったので、フォスが狂いだしてからの宝石の国に一体どうなってしまうんだと思っていましたが、実はそこも計算されたストーリーだったのだと関心しました。とても心に残る作品でした。アニメ2期は内容的に難しいかもしれませんが、ファンとして期待したいです。

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この記事を書いた人

漫画やアニメの考察記事を書いてます。元ライターで現在は複数のサイトを運営。

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