『私の胎の中の化け物』優等生の裏に潜む狂気
私の胎の中の化け物(1)
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『私の胎の中の化け物』に登場する主人公の神城千夏は、物語の冒頭では優等生を絵に描いたような清楚で品行方正な少女として登場します。
しかし実際は、そんな表の顔とはうらはらに、周囲を巧みに操る策略家の一面を持っていたのです。他人の心の闇を見抜く能力があり、その弱点に付け込んで相手を打ちのめしていきます。
千夏自身も過去に何らかの苦痛を経験しており、その影響が彼女の狂気的な行動の源泉となっている可能性が示唆されています。
千夏の復讐の対象は、彼女自身や周りの人々を苦しめてきた加害者たちです。非道な行いに身をまかす教師、いじめを働く生徒、権力を濫用する教員など、自らの行動の悪しき所以を自覚していない者がターゲットとなります。
千夏は彼らに対して徹底的な復讐を遂げ、その愚かな所業が招く結末を見せしめるのです。
屈辱的な出来事が引き金に
中学時代、セクハラや体罰を平気でする不届き教師から、生理用品をまき散らされるという屈辱的な出来事に遭った千夏。
このショッキングな体験が、千夏の内に長らく潜んでいた狂気の存在に気づかせる契機となりました。
当時はその湧き上がる感情の正体を自覚できずにいましたが、無意識に人を憎むことを抑え込んでいたのです。
化け物の覚醒
しかしそうした中で、ある時は突然その教師を階段から突き落とし殺害してしまいます。これが千夏の内なる”化け物”が目覚めた瞬間だったのです。
人命を冷酷に奪った事実に対し、千夏は心の底から歓喜の笑みを浮かべてしまったのです。
千夏は生まれながらのサイコパス?
千夏がなぜこのような狂気的な性向を持つに至ったのか、その根源については作中で明確に示されることはありません。
しかし、普通の良家庭に生まれ育ったことから、生まれつき狂気を宿していた可能性、つまり所謂サイコパスだったのではないかと考察されています。
千夏の異常性に惹かれる者たち
確かに千夏の行状は常軌を逸した狂気の権化とも言えますが、一方でそのような主人公の異常性に何か引きつけられるような面白みも存在します。普通の人間離れした主人公像は、読者を新鮮な興味と共に物語に惹き込んでいくのかもしれません。
千夏による犠牲者が生まれる一方で、千夏の狂気的な行動は、いくつかの被害者を救うこともありました。壮絶ないじめを受けていた山中槐と、酷い仕打ちを受けていた寺田悟がその例です。二人は千夏に復讐のきっかけを与えられ、それ以後は千夏の協力者ともなったのです。
心の隙に入り込みトリガーを引く
人は誰しも善悪を併せ持ち、何らかの憎しみを内に秘めています。千夏はそうした人間の内在する負の感情を解き放ち、復讐心を呼び覚ましたのです。
しかし千夏自身がなぜ狂気に囚われ、復讐の道を選んだのかは物語の中で明かされることはありません。
同類と思われた青砥だったが
3巻では、千夏と対照的な新キャラクター、青砥和芭が登場します。彼は快楽殺人を楽しむ冷酷なサイコキラーで、千夏との対決が新たなドラマを生み出します。
青砥は、千夏のことを同類だと気が付き接触。同類と思われた青砥でしたが、青砥は人殺しを楽しむただの快楽殺人者でした。世界を拒絶し悪事を働くことでカタルシスを感じる千夏とは異なる存在。千夏は青砥との出会いで、新たな自己認識を促し、彼女の内面に潜む「化け物」と向き合うことに。
この物語は、復讐というテーマを通じて、人間の心の闇と向き合う過程を深く掘り下げています。読者は千夏の復讐に嫌悪感とカタルシスを感じつつ、ストーリーに引き込まれることでしょう。
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