８月度新刊オススメ漫画紹介 『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』『山口つばさ短編集　ヌードモデル』『光が死んだ夏』ネタバレ感想

タバコ休憩、それは激務の合間に許されるちょっとしたオアシス……。喫煙に対して風当りが強まる昨今、タバコを題材にした漫画が話題になっている。『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』は「次にくるマンガ大賞 2022」のWebマンガ部門の1位を獲得し、俄然注目度がアップした漫画だ。主人公は社畜街道まっしぐらのくたびれた中年、佐々木。佐々木にとって唯一の癒しが会社帰りによく寄るスーパーの店員「山田さん」の可憐なスマイルだった。ある日山田さんが不在でがっかりしている佐々木に対して手招きする女性が現れる。

パンキッシュなジャケットに沢山のピアスを着けた女性とスーパーの裏で喫煙することになった佐々木。かくして山田さんと同僚の”田山さん”との喫煙タイムも佐々木にとっての新たな癒しルーチンとなったのだった。

いつもニコニコ可憐な山田さんとちょっと小悪魔的なパンチの効いた田山さん。田山さんの髪の伸縮がどうなっているのか、野暮な疑問は置いておこう。田年齢のわりにピュアな佐々木。二人の微笑ましい関係が見ている側もホッとさせる、そんなオススメのラブコメだ。佐々木が山田さんの正体に気づくのはいつになるのだろうか。

『ブルーピリオド』で有名な山口つばさの短編集。クラスでひとり美術に打ち込む夏目。美大を目指す彼女は傍目を気にせず絵を描き続ける変わり者だ。罰ゲームで彼女を落とすことになったクラスメートの百瀬は、自らヌードモデルに志願し急接近するが……。顔色ひとつ変えずデッサンし続ける夏目を目にし百瀬はある感情の揺らぎに気づく。

表題作のほか、女性のふりをするいたずらで承認欲求を満たす男子高校生・矢田が事件に巻き込まれる「おんなのこ」、吸血症のホストと女医の歪んだ関係を描く「神屋」の３篇を収録。思春期特有の”性”への感情が鋭く描かれており、それは見ている側の胸をキュッと締め付ける。アートに打ち込む少年少女たちを描いた『ブルーピリオド』とはまた違った一面を見せる短編集となっている。

爽やかなスカイブルーを背景に笑みを浮かべる白髪の少年。この装丁からは想像できないがこの漫画はホラー要素を多分に含んでいる。「ヤングエースUP」で連載中の『光が死んだ夏』（モクモクれん/KADOKAWA）はショッキングな青春ホラーだ。

主人公のよしきと光は山村で幼い頃から一緒に過ごしてきた。しかし行方不明となって戻ってきた光が”光ではないナニカ”であることによしきは気づいていた。得体のしれない”ナニカ”はピュアで愛嬌のある性格をしていて、段々とヨシキも依存していく。光を失ったことでぽっかりと空いた穴をナニカで埋めようとしてしまうヨシキだが……自身の周囲で異変が起き始める。人間的な一面を覗かせるナニカに対し、読者もどこか思議な違和感を抱きながら読み進めることになる。ナニカとは一体何なのか、少しずつ崩れていく日常の中でヨシキのナニカに対する感情も歪んでゆく——。ただのホラー作品とは言い切れない、少年たちの奇妙な友情のゆくえから目を離せない。