アニメ「Sonny Boy -サニーボーイ-」第12話(最終話) ネタバレ考察

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第12話「二年間の休暇」感想、考察

漂流していた期間分、時が流れて2年後の高校生になっている長良は漂流のことを覚えていた。
校門の前で瑞穂と出会うが・・・覚えていないようだった。
高校に通いながらバイトをして生活する長良。依然と変わらない辛い日々が待っていた。

その世界には希がいた。希は長良のことを覚えていなかった。朝風と付き合っているのだろうか。
朝風は平凡な生徒だったはず。バスケ部に助っ人で呼ばれるほど運動神経が良いことになっている。
この世界は元いた世界とはやはりどこか違う。

でも、確かに漂流はあった。

観覧車?で光の速さを超えてコンパスが刺す世界を目指した時、降りた先で朝風が待っていた。
朝風が持っていたもう一つのコンパス。こちらが希本来のコンパスだろう。

知らなければそれで済んだんだ。与えられたもので充分じゃないか。

しかし、与えらえたもので満足した朝風には結局何も残らなかった。

新しい世界にいる自分たちは、自分たちではない。
それでも長良は、希が見ていた光の先の可能性の箱を開けた。
そこは希が望んだ世界だから。希だけが見れる「光」。もしかすると希はその光の先の世界まで見れていたのかもしれない。

長良と瑞穂は手を取り合い走り出す。
toeの書きおろし曲「サニーボーイ・ラプソディ」が流れる。まるで踏切のような音が延々と鳴り響く。EDテーマの少年少女の歌詞で
「2000光年の列車で悲しみを超えたなら 少年は少女に出逢う」とあるが、乗っていた列車が今動きだした。

朝風なんかは与えられた能力に満足し、漂流した世界に最後まで留まった。しかし朝風には何も残らなかった。朝風は閉じこもった世界で「停滞」した。
静止した世界。停滞は何も残さない。
呼び止めるヴォイスの声を無視し、静止した世界から自らの意志で走り始めた長良と瑞穂。戻る世界に希が生きているとは限らないし、自分たちも別人だ。それでも「希が見た光の先」へと向かうことを決めた長良。希は能力を通して光の先にある世界が見えていたのかもしれない。
その世界にはきっと希がいた。コンパスへと変わってしまった希の能力を長良は最後まで信じ続けた。

帰った世界は以前いた世界とどこか違う。

瑞穂が住んでいた祖母の家が空き地になっている。トラが死んだと母に伝えられてもショックを受けない瑞穂。そもそも猫のことを「お婆ちゃんの猫」と呼んでいる。元の世界では祖母の家で猫を家族同然に扱っていた。この世界ではおそらく瑞穂は祖母や猫たちとは別居していると思われる。猫にも愛情なんて持っていないのだろう。

中学校に侵入し、色々確認する瑞穂。黒いカーテン、他の世界につながっていたトイレ。グラスをわざと落とす。当然割れたグラスは戻らない。静止した世界ではないからだ。

「ラジダニのオウムは笑う」


猫に愛情の無い瑞穂が後から、「アパートを借りて猫を引き取ろう」と言ったのは、漂流した瑞穂の人格だろう。もしかすると、冒頭で長良のことを覚えていなかったのは、本当に長良のことを知らなかったのかもしれない。瑞穂は漂流したことを覚えていた、というよりこのタイミングで思い出したのかもしれない。

あの漂流した世界にいた希は消えてしまったのだろうか。

長良が持ち帰ったコンパスがどうなったかは結論は描かれていない。

ヴォイスが「どうやってそれを持ち帰るんだ?」と言った瞬間、制服を着た金髪の少女が映るシーンがあった。持ち帰ったコンパスはこの少女に生まれ変わっているかもしれない、というかそうであってほしい・・・。11話の葬式は本当の「葬式」だったのかもしれない。
アニメ的な展開ならもしかしたら最終回で復活しないだろうか、そんな一抹の望みを持っていた。しかしガツンと殴られたような衝撃を感じた、リアリティのある「死」とはあっけないものだと。

それでも、この世界の希も小鳥を助けて育てようとしている。

人って生まれただけじゃ価値なんてないんだよ。だからその後の人生でその意味を見つけなくちゃいけない。与えられたものに最初から価値が決まっているなんて他人任せで気持ち悪いよ。第5話で希は言った。

希は長良のことを覚えていなかったが、確かに希は生きている。いきなりは約束は果たせなくても、これからの人生でいつか希との約束を果たそうとしているのかもしれない。

漂流した世界の中には、いろんな世界が存在していた。それぞれの世界は漂流した生徒たちの内面を描いているようだった。
暗幕に閉ざされた世界、病に侵された世界、いずれも少年少女たちの内面にフォーカスされていた。


最終話の表題が「二年間の休暇」。漂流した世界は、生徒たちにとって都合の良いものだった。一緒に漂流したメンバーたちは元居た世界に帰るという意志を貫けなかった。漂流という少年少女たちの現実逃避。

それでも長良は帰ってきた。サニーボーイは2000光年という漂流を経て一人の少女=希にもう一度出会うまでのストーリーだった。その結末はハッピーエンドだったのかはよくわからない。


ただ、最後に長良は微笑んだ、それだけでも1話からずっと見てきた側として少し救われた気がした。

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